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目次
はじめに
先日、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K Proの工場出荷状態のLCDスクリーンが青みがかかっている現象について記事にしました。
僕自身、中野にあるフジヤカメラに出向いて実機を手で触ったのですが、スクリーンがブルーすぎて驚きました。
話は飛びますが、実は最近、BMPCC系カメラでLidarでのスムーズなオートフォーカスを実現するという触れ込みでCDA-TEKから発売されたAFX、オートフォーカスモジュールが遂に送ってきました。
これは、実際の性能をテストしなければと思い、BMPCC 4K / 6K / 6K Proのどれかを購入する予定で、6K Proは筆頭候補にしていましたが、スクリーンがあまりにもブルーなのにドン引きして(フジヤカメラでは)購入せず家路に着きました。
フジヤカメラのスタッフの皆さん、とても親切にデモ機を見せてくださりありがとうございます。 皆さん、映像撮影機材を購入するならフジヤカメラがお薦めですので、是非ウェブサイトを覗いてみてください。 映像撮影用の中古カメラ機材の安さと品揃えはSystem5とVideo近畿より半歩リードしています。
さて、話題を6K Proのブルーなスクリーンの話に戻します。
問題が発覚した直後から一貫して、Blackmagic Designの見解はファームウェア アップデートによる修正を行うということでした。 僕自身、個体差があるLCDスクリーンの色味をどうやってファームアップで直すのか興味津々でしたが、Blackmagic DesignはLCDスクリーンのキャリブレーション機能を追加するという解決策を取ってきました。 なるほど、これならば個体差があっても、ユーザーが好みの色に設定できるので便利ではあるな、と思いました。 今回紹介するYoutube映像を見るまでは。
The DP Journeyは正真正銘のシネマトグラファーが運営するチャンネルで、とても分かりやすくBMPCCシリーズの比較動画やPanasonic S5やSony α7S IIIシリーズのProRes RAW外部記録に関する動画を作ってくれています。
さて、今回、このページの冒頭に貼り付けた動画で、BMPCC 6K Proの新しいファームウェアアップデートにより実現したLCDスクリーンのキャリブレーションに関してSherif Mokbelさんが実際にキャリブレーションを行った感想と、現状のファームアップにおける限界に関して述べていますので紹介したいと思います。
Sherifさんのファームウェアに対する感想
Sherifさんは動画の冒頭でこう述べています。
BMPCC 6K ProのLCDスクリーンに青みがかかっている問題を以前指摘したことがあるが、この問題のせいでBMPCC 6K Proのホワイトバランス調整を正確にすることはほぼ不可能かのように思われた。
幸いなことに、Blackmagic社はファームウェア アップデート Ver. 7.3を発表することでこの問題の解決に向けての一歩を踏み出した。 今回のアップデートにはスクリーン キャリブレーション機能が追加されていて、この機能を使用することでBMPCC 6K Proのスクリーンの色彩を調整可能となっている。 このファームウェア アップデートにより、スクリーンがブルーの発色をしている問題は解決したのだろうか? 私自身が何度かキャリブレーションの工程を試みた結果として率直に言わせて貰えば完全な解決には程遠いものであると言えよう。 私のBMPCC 6K Proのスクリーンを、一貫性を保った信頼できる発色に常に調整することは不可能であった。
(上から続き)そのため、私が撮影現場にBMPCC 6K Proを持っていく度に、必ずキャリブレーションをする必要があった。そしてBlackmagic社が今回のファームウェア アップデートと併せて、キャリブレーションツールを正しく使いこなす方法を一切提示していない事も気になる。 今回の動画では、私が考える上での(この極めてベーシックなツールを使っての)もっとも正しいキャリブレーションの仕方を順を追って紹介することにしたい。(以下、Youtube映像から抜粋した写真を使用しているため、メニュー用語は英語表記の写真となっている旨、ご了承ください)
キャリブレーションの手順
ファームウェアを7.3にアップデートした後に私が準備したのはキャリブレーションターゲット用の中間グレーと白色のカードの2枚である。
次に中間グレーのカードを左に、白色のカードを右に配置する。その後、メニューからCalibrate Screenを選択しよう。
「次のスクリーンに移行して二つの参照パッチの色合いがニュートラルになるように調整しますか?」という質問が現れるので、Adjustを選択することで次の画面に移ろう。
次に現れる画面には中間グレー(右)と白色(左)が表示され、それぞれの色合いを調整するように促される。
もう一度、前の画面での指示を思い出そう。
「次のスクリーンに移行して二つの参照パッチの色合いがニュートラルになるように調整しますか?」
ここでの、ニュートラル(中間、中立、どちらにも偏っていない)とは実に相対的な言葉である。例えば今ニュートラルな色合いに見えるものが5分後にニュートラルに見えるかというと、その保証はないのである。それは、我々の人間の能力として、環境光に自然に適応して脳内でオートホワイトバランスを施して外界を見るという能力が自然に備わっているからである。 日々の生活ではとても便利な能力だが、今回のように色のキャリブレーションを感覚だけで行うという作業においては、邪魔な能力だと言えよう。
このような脳の自然な色彩調整を最低限に抑えるため、私が考えたのはインドアの暗い環境においてキャリブレーションを行うことである。この時、理想としてはハイクオリティのキーライトを使用したい。
この時、ライティングで注意するべきことはできるだけ、2枚のカードに均等に光が照射されるようなフラットライティングを志すべきであることである。
上記の方法を取ることで、常に変わり続ける環境光に左右されることなく、脳内の色彩調整も抑制することで、ニュートラルな色彩に調整することが可能となるだろう。
この時、私がお薦めするライトはNanlite PavoTube II 6Cである。このライトはとても高いCRIを誇り、サイズも手頃なため、場所を取ることなく小さな照明セットを組むことが可能となる。
CRIとは演色評価数と言って、照明の色の忠実度合いを0から100の数値で表します。数値は高いほど良いとされています。
演色性とは(Wikipediaより)
演色性(えんしょくせい)とは、ランプなど発光する道具・装置が、ある物体を照らしたときに、その物体の色の見え方に及ぼす光源の性質のこと。
Nanlite PavoTube II 6CのCRIは95で、かなり高い方に分類されます。
それだけでなく、以下のような機能があるみたいです。優れものですね。
- バッグやポケットに収納できるコンパクトサイズで、クローズアップのフィルライトとして利用可能
- 線形光源と拡散光源の組み合わせがあり、ディヒューザーやバウンスをしなくても拡散光のような柔らかい光を演出可能
- HSIモードを使って色相と彩度を完全に制御でき、最大36,000色の発色が可能
- 特殊効果モードも15種類ついていて、なおかつ両端に磁石があり三脚ネジ穴も
- 【多角形デザイン】:両端に磁石が内蔵されたPavoTube II 6Cを使用すると、どこにでもすばやく照明を設定できるため、どこで撮影しても優れた照明を確保できます。
私はNanlite PavoTube II 6Cの色温度を5600ケルビンに合わせることにしている。この色温度に関しては、カメラのホワイトバランスの色温度と一致するならどの数値でも構わない。
一点だけ付け加える必要があるならば、照明というのはいくらCRIが高くて、色温度設定ができると言っても実際の発色には数値とのズレが生じるということである。 なので、可能ならば色温度を測定できる色温度計測器 (カラーメーター)を準備して、その都度チェックしてあげることをおすすめする。
最近はiPhoneで色温度まで測れるんですね。 とても便利な世界になりましたね。
色温度計測器で測ったところ、実際のNanliteの色温度が4980であることを受けてカメラのホワイトバランスを一番近い数値と思われる色温度5000に設定し直した。
最後にカメラメニューでDISPLAY 3D LUTをONにして準備完了である。
準備ができたらば、ディスプレイに表示されている中間グレーと白色が、照明に照らし出された実際の中間グレーと白色のカードと同じになるように調節しよう。
正確性はそこまで気にしなくても良い。この段階はまだ第一段階である。十分、色合いが同じであると判断したら設定を保存して(Saveを押す)、その後、LCDスクリーン上に表示されるカメラのセンサーを通して映し出されたカードの映像(ライブフィード)が 実際に目で見たカードの色合いと合っているかを再確認しよう。実はここが一番重要である。ここで色合いが間違っていればあまり意味がないため、もう一度キャリブレーションを行うことになる。 このプロセスを繰り返すことで微調整をしていくことになる。
強調しておきたいのは、おそらく100%正確にLCDスクリーンの色調整を行うことは不可能であろう。90%くらいの正確性が保てたならば良しと考えていいと思う。
この方法における問題点
現行の調整方法は、ここまで見ていただければお分かりの通り、とても面倒である。特にライブフィード映像を見ながら調整することができないのはとても残念な部分である。
また、設定が数値化されていないのも残念である。数値化されていないため、なんとなくの勘頼りの調整になってしまい、数字を見ながらの微調整が難しい。 また、数値化されていないため、何度も同じ設定に戻す、再現するという作業が難しい。
なので、私は今回の解決策はプロフェッショナルなレベルでのキャリブレーションの提供ではないと判断する。どちらかというと、簡易的な設定であり、現場の環境によって再調整が必要になるレベルのキャリブレーション方法である。
どのカメラに備え付けられたモニターも色の正確性が100%のものはない。メーカー毎に、機種ごとに、個体ごとに色は微妙に異なる。 色の正確性を保証する高価なモニターがなければ正確な色はモニタリングできない。 しかし、今回のBMPCC 6K Proのモニターはそのような理由があったとしても、許容の範囲を大幅に超えて青みがかかってしまっていたと言えよう。
今回のYoutube動画の最後にBlackmagic社の外付けモニターであるBlackmagic Video Assistに映し出されたBMPCC 6K Proの映像が本体のLCDスクリーンの映像と比較されていますが、この色味の逸脱範囲は許容範囲外であるとSherifさんは結論づけていますね。
BMPCC 6K ProがBMPCC 6Kに比べて優れている点の一つが、外付けモニターを使わなくてもで運用可能になったことでした。もちろんRAW記録をした場合、後でホワイトバランスはいくらでも変えられますが、それは論点からずれていると言えるでしょう。
Blackmagic社のファームウェア アップデートでの更なる対応が望まれるところです。