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今週はiPhone 12 Proが発売されたこともあり、Youtube上ではiPhone 12 Proの様々なカメラ機能のテストレビューが上がっていますね。
このiPhone 12 Pro、何が凄いかって、Appleがとうとう本気になってカメラ性能(とりわけ動画性能)を引き上げてきたことでしょう。 10ビット HDRで4K/60Pが撮影できるというのは庶民向けのアップグレードではなく、確実にプロへ向けて放たれたメッセージとなるでしょう。
iPhoneのカメラ性能を引き上げることによって、コンパクトデジタルカメラの市場を完全に奪い取ったAppleが、今度は大型センサー搭載のミラーレスカメラの市場を奪うために本格的にアップを始めたと僕は見ています。その手始めが10ビットHDR撮影とiPhone 12 Pro Maxの大型センサー搭載&センサーシフトでの手振れ補正の搭載ということでしょう。
そう遠くない未来に、iPhoneでProRes Raw撮影、iPad Proにて本格的な映像編集ができる日がやってくるに違いありません。
さて、本題に入りますが、新しいiPhoneにも搭載されたLiDARテクノロジーを活用した画期的なオートフォーカスシステムが、DJIから新しく発売されたジンバルである RS2 (Ronin S2)にて採用されています。
なんと、LiDARセンサーからの距離情報をフォーカスモーターに伝え、回転させることでオートフォーカスとほぼ同じ効果をマニュアルフォーカスレンズにて行うことが可能だということなのです。
大人気ジンバルであったRonin Sの後継機であるRS2ですが、この機能が使えるならば、買い換える価値もあるかもしれないと思っていたところ、僕の大好きなFilmmaker/YoutuberであるJoshさんがテストしていますので、紹介いたします。
目次
MAKE.ART.NOW. のJosh Yeo さんはDJIのRS2ジンバルで新しく搭載されたRiDAR技術を駆使した3Dフォーカスシステムを試しています。
DJIのオフィシャルサイトによると
3Dフォーカスシステムは、ToFセンサーを使ってレンズと被写体の距離を計測し、低照度環境下でも鮮明な映像を撮影できます。この高度なシステムにより、大口径MFレンズでも、オートフォーカスをすばやく行えます。
とのことです。
JoshさんはDJIのRoninシステムを徹底的に使いこなしていて、僕もこのブログで取り上げさせていただきました。 この時はカメラマンなしでRoninにカメラワークを任せるという離れ技を見せてくれています。
Joshさん
去年の8月にRonin Sのカメラトラッキング機能とα7IIIのオートフォーカス機能を利用してカメラマン不在のトラッキングショットを成功させたわけだけど、今回も似たようなテストをRS2を使って行っている。 映像は似通っているけど、前回と決定的に違うのはRS2のWIFI映像伝送システムであるRavenEyeを使ってレイテンシーの少ない映像をスマートフォンに転送しながら被写体をトラッキングさせている。それだけでなく、3DフォーカスシステムのLiDAR技術を使って被写体との距離を測ることで、フォーカスさえも追従させることに成功している。
LiDARスキャナは物体に反射する光子を測定し、カメラからの距離を計測するというとても正確な測定システムで、測定した距離情報をフォーカスモーターに直接伝えることでマニュアルフォーカスレンズでも正確なフォーカスを実現している。
JoshさんがここでテストしているレンズはMitakon ZHONGYI SPEEDMASTER Mark III 50mm F0.95で絞りはもちろん開放のF0.95でテストしているみたいです。(モーターがフォーカスを合わせている動画は0:28秒から)
Joshさんによるとこの機能はRS2に特化したもので、RSC 2では利用できないとのことです。
Joshさん
開放値をF0.95でオートフォーカスできるレンズを見たことがあるかい? おそらくないと思う。 それくらい、ここまで被写界深度が浅いとフォーカスを合わせるのは簡単ではない。
もちろん、最初に見せたクリップは少し編集してるからフォーカスが外れた部分はカットされている。そこで、今からノーカットの映像を流すから一緒に確認しないか?
(ノーカット映像は動画2:32秒から)
しつこいですが、ここでもう一度整理しましょう。 この映像はジンバルであるRS2と二つのシステムが相互に補完しあって出来上がっています。
1) RavenEye 映像伝送システム
このシステムを利用することで映像をスマートフォンに転送し、Roninアプリでモニタリングしながらトラッキングする物体を選択可能です。
2) 3D フォーカスシステム
このシステムはLiDARセンサーモジュールを使って被写体との距離を測ることが可能で、その情報をフォーカスモーターに伝えることでオートフォーカス を実現します。Joshさん曰く、被写体が真ん中にいる時にのみ効果を発揮するとのことです。オフィシャルサイトを訪れると、はっきり下記のように説明書がありました。
オフィシャルサイトから
レンズと被写体の距離を自動で検出し、マニュアルフォーカスレンズの中央AFフレームを有効にします。
Joshさん
ノーカットの映像を見て分かる通り、被写体がフレームの中央から外れるとフォーカスが合わなくなる。被写体のトラッキングに関してはスマートフォンを(初代Ronin Sの時のように)ジンバルに据え置きにする必要はない。
テスト1
BMPCC 6K + RS2 + 3Dフォーカスシステム
(動画5:30秒から)
お世辞にもオートフォーカス性能が良いとは言えないBMPCCシリーズですが、動画を確認する限りではフレームの中央にしっかりとフォーカスを合わせることが確認できます。
今回のJoshさんの実験結果を見るとRS2と3Dフォーカスシステムを使うことで、マニュアルフォーカスレンズでのオートフォーカスというのは夢物語ではなさそうです。
ちなみに、BMPCC 4Kと6Kモデルのオートフォーカスに関しては、既に何度か記事にしています。
上の記事で紹介されているCDA-TEKの方法はBMPCCのオートフォーカスをオーバーライドしてオートフォーカスレンズのオートフォーカス性能を向上させるものであり、RS2の3Dフォーカスシステムはメカニカルなマニュアルフォーカスリングと連動してオートフォーカスを実現するという違いがあることは認識するべきでしょう。ただし、どちらもシステムの根幹はLiDAR技術に支えられています。
追加: CDA-TEKからRiDARベースのオートフォーカスシステム、AFXシステムが発売されました。
個人的には案外RS2と3DフォーカスシステムのコンボがCDA-TEKの方法よりも直感的で使いやすいかもしれないと思いました。 ただし、必ずジンバルに載せないといけないことと、ジンバル自体の値段が高くつくことから、どちらも需要はあるのだろうと考えられます。
Joshさん
被写体との距離は最短で1mから遠くて4mまでの幅でピントを合わせている。これは3Dキャリブレーションの工程(後述)から想像することができる。 また、印象的なのはローライト(低照度)な状況でも全く問題なく被写体との距離を測り続けたことである。
当たり前のことと言えば当たり前なのですが、このシステムは環境光の影響を全く受けません。昼間でも真っ暗闇でも、光子の測定さえできれば距離は計測できるのです。
(ローライト時のフォーカステスト 動画6:35から)
Joshさん
カメラと独立して距離を測定をしているわけだから、カメラの電源をオフにしても継続してモーターはフォーカス情報を基にフォーカスを合わせ続けることになる。 ISO 25,600のテストでは部屋での明かりはEXIT(出口)のサインだけだった。真っ暗闇さ。
テスト2
暗闇でのオートフォーカス比較
BMPCC 6K + OTUS 55 F1.4 (with RS2 & 3Dフォーカス)
VS
Sony α7III + Sigma 24-70 F2.8 (Sonyのオートフォーカス)
(比較動画は7:34から)
BMPCC 6K VS α7IIIのオートフォーカステスト in 暗闇
Joshさん
Sigma 24-70のレンズはα7IIIとの組み合わせで驚異的なオートフォーカススピードを誇るけれど、ローライトシチュエーションではフォーカスが迷うことが多かった。対してマニュアルフォーカスレンズと組み合わせたBMPCC 6Kは暗い環境にも全く左右されないしっかりとしたオートフォーカスをRS2と3Dフォーカスシステムで実現していた。
Joshさん
もちろん、先述したように22フィート(6.7m)を超える距離では光子を測定できないため、フォーカスは全く合わなくなる。
対応レンズ
Joshさん
簡単に知っておくべき点をまとめて伝えたいと思う。まず、このシステムはRS2でしか使えない。RS2のフォーカスモーターコンボと一緒に購入する必要があるので一定の金額を投資する必要があることを覚えておこう。
バイワイア方式のレンズではフォーカス送りができないことも伝えておこう。メカニカルフォーカスのレンズでしかこのシステムは使用できない。バイワイア方式のレンズはフォーカスリングが無限に回り続けるレンズだと思ってくれて良い。
Joshさん
配線もしっかりしないと機能しないことも伝えておこう。このシステムを運用するには何本ものケーブルを正確に配線しないといけない。
カメラコントロール、3Dフォーカスモジュール、HDMIトランスミッター(RavenEye)の接続がしっかりできて初めて正常に動作する。
キャリブレーションの手順
Joshさん
レンズのキャリブレーションプロセスは大体1分くらいで完了できる。
この類のシステムとしては第一世代と呼べるこのオートフォーカスシステムの精度が高いことに驚いた。 被写界深度の浅い状態でのテストばかりだったにもかかわらず、結果は満足のいくものだった。F0.95でのフォーカスを合わせるのがどんなに大変なことなのかは想像だけでもしていただければ嬉しい。
- メニュー画面から3Dフォーカスの項目を選ぶ
- レンズを登録する(メモリーにレンズを三つまで登録可能)
- 1m先の被写体にフォーカスを合わせてSet Focusを押す
- 4m先の被写体にフォーカスを合わせてSet Focusを押す
- MFかAFを選択して終了
テスト3
オートフォーカスがあまり得意でない昔のカメラ (例えばα7S II)で比較
(動画は10:44から)
Joshさんは昔のカメラもこの3Dフォーカス技術で最新のカメラと渡り合えるのでは?と考えてα7III VS α7S II (RS2&3Dフォーカスシステム)の比較を行っています。 もちろん、動画でご確認ください。写真でよろしければ下の写真のようにほぼ互角です。(左がα7IIIで右がα7S II)
Joshさん、これを一人でやっているのですね。 素晴らしいレビューアー魂ですね。
まとめ
- Ronin Sの後継機であるRS2の3Dフォーカスシステムはマニュアルフォーカスレンズでのオートフォーカス を可能にする
- オートフォーカスの精度はα7IIIのオートフォーカスに匹敵する
- RSC2ではこのシステムは利用できない
- バイワイア方式のレンズは使えない
- 低照度でもフォーカスの精度は変わらない
- フォーカスを合わせる範囲は大体カメラから1m〜4mの間でそれ以上離れると難しい
- フォーカスはフレームの中央でのみ見合わせることが可能
- 3Dフォーカスシステム(17,270円)とRS2のプロコンボ(105,600円)の合計は12万円を超える投資となる
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