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Ronin 4Dから去るRAW、Androidに来るRAW

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Ronin 4Dは画期的なカメラではあるが…

実は、10ヶ月ほど前にジンバルやドローン技術で他を圧倒するDJIがシネマカメラを開発しているのではないかという記事を別のフォーラムに載せました。(実際の発表の6ヶ月前)

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この時は書いている自分でさえも情報が眉唾物すぎて、あまり真剣に捉えていなかったのですが、実際に形になって現れた時に、その形状のユニークさと革新的な性能に驚かされたのは僕だけではなかったことと思います。

Ronin 4Dの素晴らしさはたくさんありますが、

  • カメラ本体にスタビライザーが組み込まれている
  • そのスタビライザーはZ軸の補正もできるため、上下の振動が補正できる
  • LiDAR技術搭載で、マニュアルレンズを使用する際もオートフォーカスができる
  • 長距離伝送技術を搭載し、フォローフォーカスの操作も容易になっている
  • ルフレーム / 6K & 8K センサーを搭載
  • カメラ内部でProRes RAWの記録ができる

羅列するとこれらが特筆すべき点かと思います。

が、最後の項目の

 

・カメラ内部でProRes RAWの記録ができる

 

は昨日付で不可能になりました。

DIYphotography.netによりますと

DJIはフラッグシップカメラとなるRonin 4D 6Kの最大の特徴の一つであった、ProRes RAW内部記録機能の搭載を見送る決断をした。 Ronin 4D 6Kは発表当初、60PまでのProRes RAWでの記録を謳っていたが、この機能は実現しないこととなった。 

何故このような結果となったかに関しての詳細は明らかではないが、RAW記録に関する特許の問題がその理由であると推測されている。 

ただし、Appleのウェブサイト上において、Ronin 4D (そしてZenmuse X7)はいまだに公式にProRes RAWをサポートする製品として紹介されている。

そして、この理由のためかRonin 4D 6Kの値段は$400値引きされることとなった。

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2/16日にキャプチャしたRonin 4DのスペックシートはいまだにProRes RAW記録
をサポートすることになっている(いずれは変更が予想される)

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2/16日からの商品発送に伴いDJIから発表された文

DJIによると

・Ronin 4DはApple ProRes RAWでの内部記録は発売時には利用できない機能となること

・但し、Apple ProRes 4444XQでの記録が将来的なファームウェア アップデートで記録可能になること

の二点が明記されています。推測段階ではありますが、ファームウェア アップデートによってApple ProRes RAW記録が可能になるとも、そうでないとも受け取れる文面となっています。

 

DIYphotography.netによりますと

Ronin 4D 8Kモデルに関する記述は一切見つからなかったことから、6Kモデルと8Kモデルの機能的な差別化を狙っているのでは? という憶測もある。 但し、(アメリカでの映像機材販売大手)B&Hに記載されたRonin 4D 8Kモデルの機能紹介の欄でも、ProRes RAWでの記録が「(発売初期において)サポートされない」と改定されている。

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B&HのWebページで見るRonin 4D 8Kモデルの機能紹介

興味深いことに、Ronin 4D 6Kの値段は$400値下がりしたのに対し、Ronin 4D 8Kモデルは値下がりしていない。 なぜこのようなことになったのかわからないし、Apple公式サイトでは継続してProRes RAWをサポートするカメラとして掲載していることに疑問を感じる。

今回の変更でRonin 4Dの販売数が当初の見込みよりも減ることになる可能性もあるだろう。

 

さて、ここまでお伝えしましたが、一応、REDがカメラ内部でのRAW記録に関して特許を持っていること、そして、その特許のせいで殆どの市販のカメラがカメラ内部でのRAW記録への対応をしていないことは、以前このブログで何度か紹介して参りました。(REDが持つ特許の一覧は下記のリンクからご参照ください)

ちなみに、REDの特許は2028年に失効することになる模様です。 (通常、特許は20年の有効期間があり、REDのカメラが発表された時期が2007年頃であることからの推測)

Android携帯でRAW映像撮影機能が可能になる?

去年発表されたiPhone 13が遂にProRes記録を実現したことから、モバイル ビデオグラフィーの新しいチャプターが切り拓かれたと感じる方々も多いかと思いますが、昨日、とんでもないものを発見してしまいましたので、ついでに報告いたします。

それは、Android携帯で、あるアプリをダウンロードすればRAW映像が記録できるという情報です。(前の方で触れてますが…)

 

REDのようなメーカーからの圧力がかかる現状では、RAWでの映像記録はマジックランタンや今回のアプリのように、メーカーへの責任は追求できない形で、第三者(開発者やハッカー)が実現するのが手っ取り早いのかも知れませんね。

以下に詳しくお伝えします。

 

iPhoneでのProRes記録のレポートを誰よりも先に紹介したMichael Tobinさんの情報によりますとAndroid携帯を持つユーザーにとって朗報があるとのことです。

Tobinさんはこう言います。

iPhone 13 Proの発表と同時にAppleiPhoneでのProRes記録を可能とした。現在、このフォーマットでの記録が画質の向上にどれほど貢献しているのかというのは議論の余地がある模様だが、今回のRAW記録の実現によって、Android陣営にも強力なライバルが出現したことになる。

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ProRes記録に対応したiPhone 13 Pro

ProRes記録が実現した時に私はとても興奮して、その機能を紹介する動画をアップして好評をいただいた。 しかし、Youtube上で他のクリエイター達がiPhoneの通常記録(h265)とProResの画質比較を行い、対して差がないという意見があることは事実として受け止める。 iPhoneの動画圧縮技術がとても高いため、シチュエーションにもよるが、粗探しをしないとProResと通常記録の差がわからない状況が多いようである。

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iPhone 13 Proを使用したProRes映像の抜粋 Michael Tobinさんの動画より

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iPhone 13 Proを使用したProRes映像の抜粋 Michael Tobinさんの動画より

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iPhone 13 Proを使用したProRes映像の抜粋  Michael Tobinさんの動画より

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Patrick Tomassoさんの映像より抜粋 (h265とProResの比較動画は下へ)

 

そして、iPhoneを使用したProRes記録の1番の難点はワークフローにおいて、記録したファイルの転送に時間がかかるという点であろう。

 

少しでも高画質での動画記録を追求する映像オタクの自分にとって、ある日Youtube動画に寄せられた一つのコメントは、とてもとても興味深いものであった。

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Tobinさんの動画に寄せられたコメント (Motion Camの存在はここから知った模様)

コメントの内容はMotion CamというAndroid用のアプリを知っているか? というものであった。 驚いたことに、このアプリは無料で今年(2022年)1月中旬から提供されていることがわかった。

私の知る限りでは、アプリ内課金や広告は一切なさそうである。

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Google Playからダウンロードできる、RAW撮影可能なMotion Camアプリ

 

このアプリの最大の特徴はRAW DNGで動画撮影ができるということである。 RAW DNGとは何かって? 昔からのBMPCCユーザーなら知っているかも知れないし、トラウマに思っているかも知れない。 このコーデック(あるいはフォーマット)はセンサーからの情報を直にRAWで記録しフォルダに格納したものである。 圧縮は一切されてない。 書き出されたフォルダの中にはたくさんの静止画ファイルが格納されている。この静止画の数は記録したフレーム数と一致する。(例 24Pで10秒撮影された場合は240枚の静止画ファイルが格納される)そして、静止画のフォーマットはJpegではなく、RAW DNGというフォーマットになる。 Final Cut以外のメジャーな編集ソフトでは(DavinciやPremiere、Avidなど)無数の静止画ファイルを一連の動画として認識することが可能であるため、動画として再生可能となる。 残念ながら、オーディオは別に記録されるため、音声のシンク作業は必須となる。

たくさんの人たちがRAW DNGファイルを嫌う理由が少しは理解できたかも知れない…

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このアプリの特徴は上記の記述がありますので、簡易で訳しておきます。

・真のRAW映像をCinema DNGの形で取り込み可能

・過去に遡って写真を選ぶことが可能 (これは静止画機能のことみたい)

・ポストプロダクションでのカラーグレーディング時にホワイトバランス、トーンマッピング、シャープネスなどのフルカスタマイゼーションが可能

・イメージを重ねるアルゴリズムをカスタマイズすることでノイズの低減が可能(RAWなのかは不明)

・フルマニュアルコントロールできるシャッタースピードとISO

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RAW DNGのフォーマットはたくさんの静止画がフォルダに格納されている状態

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Davinci Resolveでは一つのファイルとして認識させることが可能

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音は別途、シンクロさせる必要がある

DNGの1番の欠点はファイルサイズの大きさかも知れない。 ランボルギーニのガソリンタンクが一瞬で空になるのと似ていて、もちろん、1080Pにすればファイル容量は少なくなるが、私はとにかく最高画質を追求する人間であるのでその選択肢は考えない。

 

Google Pixel 6 Proのセンサーサイズが一般的なサイズでないため、アスペクト比率は少し通常とは違う(4080 X 3072)。 もし、あなたがとても安いAndroid携帯を持っていた場合、このアプリはうまく機能しないかも知れないことを忠告しておく。 もう一つ、忠告することとして、このアプリはたった一人の開発者によって最近開発されたものであること、なので、アプリの挙動が常に安定しているとは言い難い。 ISOやシャッタースピードの変更が可能で露出をオートにすることもできる。 フォーカスに関してもオートとマニュアルがあるようだが、私自身はマニュアルフォーカスのモードをうまく使いきれなかった。 カメラ側でコントロールできるのはそれくらいである。

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Google Pixel 6 Pro のセンサーアスペクト比率は少し特異な比率

一旦撮影が終了したらExport(出力)を押すことでライブラリに移行することができる。ファイル容量が大きいからか知らないが、たまにライブラリに移行した後に挙動がおかしくなり反応しなくなることもある。 この時に慌ててアプリをクローズしてはいけない。待っていてれば、いずれはクリップの生成に成功してアプリの挙動は通常に戻る。 知っておかなければいけないのは、RAW DNGでの撮影をした場合、一つのクリップが何十ギガという大きさにもなるという点である。 クリップを生成するのに30秒以上かかることも珍しくない。

一度、クリップがライブラリに出現したら、Convert to DNG「DNGに変換」を押すと完了である。この作業も(クリップの長さにもよるが)また時間がかかる。 最後にSET EXPORT FOLDER 「書き出し先ファイルを選択」を選択し書き出しを実行する。

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アプリが起動している状態

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ライブラリに並ぶ画像のリスト

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ファイル容量が大きいため、挙動が安定しない場合もあるが、ひたすら待つと解決するそう
アプリは閉じてはいけない

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撮影後にDNGファイルを保存するフォルダを聞いてくる

 

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保存先が決定したら、DNGファイルが完成

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iPhoneのライトニングケーブルよりもAndroidの転送スピードは早いようである

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転送スピードが早すぎて、ローディングバーが出ないことも…

RAW DNGファイルに変換された後はコンピュータに接続してAndroid File Transferを使用してデスクトップにファイルを移す作業はAppleiPhoneからのファイル転送に比べて見違えるスピードで行える。(USB 3.0 VS USB 2.0) 私の経験上、10ギガのファイルが数分で転送できている。iPhoneでProResファイルを転送する時のスピードは、とにかく遅い。これがiPhoneユーザーがProRes撮影を踏みとどまる最大の理由にもなっている。

アプリ自体はまだ挙動が安定しないこともあるが、ファームウェア アップデートにより改善される部分も多々あると思う。 少なくとも、Motion Camを利用したRAW撮影の場合は撮影が終われば、転送して編集までのプロセスはそこまで苦にならないものであるといえる。 もちろんDNGファイル形式は、クリックしてすぐに再生できるものではないが、Resolve等で読み込めばすぐにでも編集可能なものである。

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TobinさんがGoogle Pixel 6 Proで撮影した動画の抜粋の数々 (下に続く)

 

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上で紹介した本編動画の7分30秒ほどから、実際のRAW映像を是非ご覧ください!

画質に関して言及するならば、(携帯のカメラとしては)信じ難いくらいのクリアな画質を得ることができる。

iPhoneのProResから得る画質とh265の画質を比較した場合は、ビットレートの違いからくる画質の良さが見てとれたし、映像を拡大して見せる場合でもより鮮明であった。 しかし、映像が圧縮されていることに変わりはなく、暗部にノイズがかかり、更にノイズリダクションが追加されることで映像が潰れてしまうこともあるのだが、Motion Camを利用した場合はRAWのセンサーデータを利用しているため、そのような現象は見られない。暗部はとてもクッキリしている。 もちろん、使うAndroidバイスにもよるのだろうが、少なくとも私のGoogle Pixel 6 Proにおいては画質はとても良い。 正直、普通のミラーレスカメラと遜色ないレベルである。 携帯カメラのセンサーが大きくなっていることも手伝って、被写界深度も比較的浅く撮影可能でもある。 カラーグレーディング時にも、携帯メーカーが押しつけるカラーサイエンスを受け入れる必要がない。 Davinci Resolveに読み込まれたファイルは16ビットカラーとして認識されている。(もちろん、これはコンテイナーでの話で、実際は違う可能性はある)少なくとも10ビットの色彩情報よりもたくさんの情報を内包していることは確認ができている。

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iPhoneで撮影されたProRes映像

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Google Pixel 6 Proで撮影されたRAW映像

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iPhoneで撮影されたProRes (左)とPixel 6 Proで撮影されたRAW映像(右)
200%の拡大で比較

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iPhone 13 Proで撮影したProRes動画からの抜粋

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Google Pixel 6 Proで撮影したRAW動画からの抜粋

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iPhoneで撮影したProRes映像をグレーディングしたサンプル

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上の画像と全く同じグレーディングをRAW映像に施した場合

RAW映像が撮れると言っても、これは、あくまで携帯のカメラであることに違いはない。ただし、このMotion Camのアプリを使用することで携帯メーカーが圧縮を施す前に潜在する画質向上に関連する全ての要素を取り込み、自分の好みに合わせてカスタマイズできるという優位性を持っている。クリエイターとして、イメージを自分の用途に合わせて追い込むことができるということはとても重要なことである。 私自身にとっては、これは本当にエキサイティングなことなのである。 繰り返すが、このアプリはまだ安定しない部分があるし、開発されたばかりである。 私がこのような動画をYoutubeにアップすることによって、このアプリの知名度が上がり、開発者が少しでも恩恵を受け、更なる改善に力を注ぐことができればと願っている。 もしその過程でこのアプリが有料になったとしても、投資する価値は十分にあるのではないかと感じている。

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Youtubeアルゴリズムは凄いもので、去年の11月に既にMoton Camを使って撮影された「携帯カメラを使って撮影された初のRAW映像」がおすすめに出てきましたので、リンクを貼っておきます。 既にマジックランタンの時同様、コミュニティが出来上がっている模様です。 更に詳しい情報を得た場合はお伝えしたいと思います。