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※2021年5月24日のファームウェア10.64発表以降、Sonyのα7S IIIからのRAW出力をNinja V経由でProRes RAW記録した場合、ホワイトバランスとISOのパラメーターも記録されるようになりました。
上の動画でα7S IIIのProRes RAW記録をする場合に知っておくべき点と、ProRes RAWを内部コーデックと比較した場合の優位性、また、他のRAWフォーマットとの違いなどが詳しく説明されてますので、ご紹介したいと思います。
α7S IIIはスペック上ではHDMI端子経由で、カメラが処理する前の16ビットのRAWデータを出力可能となっております。このデータをAtomos Ninja VでLog形式で12ビットProRes RAW記録する方法が今のところ唯一のRAW記録の手段となっています。
内部コーデックであるXAVCフォーマットで記録するよりも更に深いビット深度で記録できるため、ポストプロダクションでの色調整において圧倒的な優位性を持ちますが、膨大なファイルサイズとノイズリダクションやLogのカラースペースの変換という意味では確実に時間のかかる作業になるため、手軽になんでもRAWで記録するのが良いということでもないでしょう。
上の動画の制作者であるThe DP JourneyチャンネルのSherif Mokbelさんはコマーシャルディレクターであり、自身でも撮影をするDP(ディレクター オブ フォトグラフィー)でもあります。
Sherifさんはこう述べます。
α7S IIIはたくさんの人が「はぼパーフェクトなカメラ」と呼ぶ素晴らしいカメラだ。ProRes RAWでの外部記録は更にこのカメラのポテンシャルを最大限に引き出すことを可能にする。ハイエンドプロダクションでの撮影に使用されるRAWでの記録をしないと損をする、そんな考えに囚われている方々も多いのではないか?
外部RAW記録をすることはカメラ内部のコーデックで記録するよりも本当に優れた画質で撮影できるのか? この質問の答えはシンプルではない。なぜならRAW記録をするということはポストプロダクションで高度な画像処理するという責任を背負うことになるからだ。RAWフォーマットはハイメンテナンス フォーマットだと言えよう。 しっかりとしたメンテナンスをしてあげない限り、撮影した映像は真の輝きを得ない。 つまり、なんでもかんでもRAWで撮影するというよりかは、きめ細かく計算した結果、RAWという撮影フォーマットを手段として選択することになるのである。
RAW撮影の実験とテストを沢山繰り返した結果、発見した事がとても多く、DPとして活動する私の偏見なしで素直な評価を皆さんにお伝えしたい。 この結果を見て、RAWで撮影する事があなたのスタイルにフィットするかどうかを判断する材料にして欲しい。
目次
- テクニカルな側面から見たRAW記録
- ProRes RAWとは?
- 必要な機器&カメラ設定
- Ninja Vで必要になるもの
- α7S IIIの設定
- 解像度
- 手振れ補正
- ファイルサイズと編集時のパフォーマンス
- ビット深度
- 互換性
- メタデータ
テクニカルな側面から見たRAW記録
この動画はパート1になるらしく、カバーするトピックはテクニカルな側面に関するお話になります。 カメラ設定、解像度、互換性、制限についてカバーしています。
ProRes RAWとは?
ProRes RAWは圧縮されたRAWコーデックであり、既に業界でスタンダードになりつつあるProResファミリーの一員である。 ProResファミリーの中では最高画質であり、ファイルの容量も一番必要とされるコーデックとなっている。 Appleによって開発されたこのコーデックはAtomosが開発に協賛することで完成している。(その後、Atomosに期限付きでライセンスされている) もちろん、開発したのがAppleなのでApple製のポストプロダクションソフトウェアは最適化された形で対応できるようになっている。
ProRes RAW HQとProRes RAWの二つの記録方式が用意されていて、ProRes RAW HQは(論理上では)より高画質で圧縮比率も少なく、その分ファイルサイズも大きくなっている。Atomosは自社のモニター/レコーダーでProRes RAW記録を可能とし、このコーデックの普及を大体的に推し進めている。
ProRes RAWは記録用フォーマットであり、書き出し用のフォーマットではない。 つまり、一度コンピューター内で処理したデータを再度ProRes RAWで書き出すことはできない。
他のProResコーデック同様、ProRes RAWフォーマットは高い効率性を特徴とする。 つまり編集時の再生パフォーマンスと高画質の両面を兼ね備えたコーデックと言える。
必要な機器&カメラ設定
Ninja Vで必要になるもの
先述したように、Atomos Ninja Vと組み合わせる必要がある。Ninja Vが手元にある場合はファームウェアが10.5.4以上であることを再確認しよう。α7S IIIでProRes RAW記録するにはこのファームウェアより以降のバージョンである必要がある。 また、ProRes RAW記録に対応するSSDカードも準備しよう。
対応SSDの確認はこのページから
ちなみに僕が使っていて、ProRes RAW記録対応でほぼ最安値だと思うSSDはSandiskのUltra3Dになります。
HDMIケーブルは18Gbpsが維持できるケーブルを購入したい。可能ならばAtomos純正を買うのが一番手っ取り早いだろう。
(個人的にも実験済みなのですが、普通のHDMIケーブルだと信号が途切れる事がありました。これでは正直、仕事で使うことは不可能なので、断念してAtomosのHDMIケーブルを購入したところ、今のところ信号が途切れることはありません)
α7S IIIの設定
α7S IIIのカメラの設定は下記の項目を抑えておきましょう。(動画では英語表示なので、日本語メニューに差し替えています)
1)メニュー→セットアップ→外部出力→HDMI出力設定→RAW出力を「入」
この設定を「入」にする事で、RAW信号がHDMI端子から出力されるようになります。
2)メニュー→セットアップ→外部出力→HDMI機器制御を「入」
この設定を「入」にする事で、カメラの録画ボタンでNinja Vの録画を開始可能になります。
3)メニュー→セットアップ→外部出力→HDMI出力設定→HDMI出力時のメディア記録を「入」
この設定を「入」にする事で、カメラ内のメモリーカードにバックアップを同時記録可能になります。
PanasonicのS1Hも活用しているSherifさんは、α7S IIIではSDカードに同時記録できることについて触れ、素晴らしいと述べています。
S1Hでは不可能なことではあったが、α7S IIIでカメラ内部での同時記録が可能なことはとても心強い。HDMI経由での記録ということで、何かしらの理由で接続状態が悪くなる可能性がないわけではなく、バックアップとしてXAVCのファイルが記録されている事がわかるだけで心が穏やかになるだろう。
外部RAW記録時の内部記録オプションは4K記録のみで、XAVC SとXAVC-S-Iのみとなっている。 また、RAW記録時のフレームレートの変更はHDMI出力設定のRAW出力設定でのみ変更可能となっている。
HDMI出力時にメニューの撮影→画質→動画設定→記録フレームレートからフレームレート変更は不可能!
解像度
RAW出力時にはセンサーの16:9のエリアをフル活用して4264 X 2408の解像度で記録をする事が可能だ。これは内部記録した場合より23.7%、解像度がアップすることになる。
下の画像はProRes RAWで4264 X 2408の解像度で撮影した映像とカメラ内でのXAVC 3840 X 2160の解像度で撮影した映像の比較をしているものになる。ProRes RAWの画質が若干シャープなのがわかっていただけるだろうか?(動画4:35から)
※下の画像の右がProRes RAWで左がXAVCになります。撮って出しの素材でシャープニングはかけてないとのことです。
4364 X 2408の解像度をUHDにダウンコンバートするとUHDの解像度(3840 X 2160)と誤差が生じてしまうため、Final Cutの設定で補正するか、Ninja Vの設定で記録解像度を変更可能である。
ProRes RAWで記録することで4240 X 2385の解像度を得ることは即ち、クロップをしても3840 X 2160の解像度を維持できるということになる。これは1.1倍のクロップとなり、目安としてはα7S IIIの動画手振れ補正モードのアクティブを適用した時と同じくらいのクロップとなる。
手振れ補正
もうご存知の方も多いと思うが、α7S IIIの手振れ補正には三つのモード(選択肢)がある。 一つが通常の5軸手振れ補正、二つ目がデジタル補正を加えたアクティブ手振れ補正、三つ目がジャイロスコピックセンサーを利用した編集時の補正だ。
この三つの手振れ補正のうち、アクティブ手振れ補正とCatalyst Browseを使った編集時の手振れ補正はRAW記録時には使用不可能となる。 Catalyst Browseに関しては、XAVCで同時記録したクリップは認識したが、ProRes RAWで記録した動画に関しては、ソフトウェアが認識しない事がテストで判明した。この理由がクリップのフォーマットが違うからなのか、ProRes RAW記録にジャイロデータが添付されないからなのか、あるいは他に理由があるのかわからないが、今の時点では対応していない。
ファイルサイズと編集時のパフォーマンス
ProResは動画編集用に効率的なファイルとして知られている。どの編集ソフトでもそうだが、特にFinal Cutを使用した時はスムーズな再生が保証されている。とは言ってもRAW記録をする時にはある程度のファイル容量を犠牲にすることを覚悟しておいた方が良いだろう。一方、Sonyの内部記録用フォーマットであるXAVCコーデックはファイルサイズが小さく、とても効率の良い記録ができるコーデックである。
ファイルサイズを比較するために、外部記録できる全てのProResフォーマットと内部記録できる全てのXAVCフォーマットにて各々10秒ずつ記録してその容量を表にしてみた。
まず、一番最初に気づいたことは、明らかにProRes RAW HQのファイルが容量的に一番大きかったことである。通常のProRes RAWの約2倍の記録容量を必要とする事がわかった。
ただし、画質面で標準のProRes RAWと比較して際立って良いという印象はなく、Final Cut上での扱いやすさも同等であったことから、ProRes HQの使用はあまりお勧めしない。
AppleのProResコーデックの他の種類と比較したところ、ProRes HQとのファイルサイズの差はとても僅かなものであった。ProRes RAWが4.2KでProRes HQが3.8Kなことを考えると両者の容量はほぼ同じと考えて良いだろう。付け加えると、ProRes RAWは12ビットでカラーサンプリングもされていない状態なことに比べ、ProRes HQは10ビットでカラーサンプリングが4:2:2である。圧倒的にProRes RAWの方がクオリティが高いのだ。
内部コーデックに目を移してみよう。三つのXAVCコーデックが用意されている。まとめると下記のようになる。(全て4:2:2 10ビットでの比較)
- XAVC S-I : H.264でのALL-I記録 (編集時のパフォーマンスは早く、ファイルサイズは大きい)
- XAVC S : H.264でのL-GOP記録 (編集時のパフォーマンスは遅く、ファイルサイズは小さい)
- XAVC HS : H.265でのL-GOP記録 (編集時のパフォーマンスはかなり遅く、ファイルサイズは一番小さいながらも画質は高画質を維持することに成功)
外部RAW記録と内部コーデックのファイルサイズを比較した場合、低いビットレートのRAW記録を選択しても、ファイルサイズはXAVC S-Iの2倍以上になる事がわかる。
ビット深度
先述したように、α7S IIIは16ビットのRAW信号を出力できる。 この部分だけを切り取って理解すれば、他のProRes RAW記録が可能なカメラと比べて優位性があるかの如く感じる。(Panasonic、Zcam、Olympus、Fujifilm、Sigma等のカメラは12ビットRAW出力)
では、どうやって16ビットの出力信号をNinja Vで記録するのだろう? Ninja Vは12ビットのRAW記録にしか対応していない。
真実は、16ビットRAW出力はSonyが宣伝文句として使いたいがために付けられた機能と言っても過言ではない。Ninja Vが12ビットまでしか記録できない上に、ProRes RAWも12ビットを上限としていることからこれは明らかである。
16ビットRAWの信号を12ビットのレコーダーで記録するということは信号が圧縮されるということだろうか? SonyのFX9も16ビットRAW出力が可能だが、AtomosがShogun7で対応した記録フォーマットも12ビットのProRes RAWであった。
ここでのトリックは出力される16ビットのデータはリニア方式であり、記録される12ビットのデータはLOG方式であるということである。
Atomosの公式コメントには、「カメラの16ビットリニアRAW出力信号を12ビットLOGファイルとして取り込むことによって、16ビットリニア記録と遜色ない画質の映像を取り込む事が可能」と書かれている。
個人的には、このAtomosの見解は正しいと言える。Atomosの公式サイトで実際にそのことを説明する動画があるので、興味のある人は参照してほしい。
できるだけわかりやすく説明してみよう。 16ビットリニアグラフにカメラの15ストップのダイナミックレンジを記録する図を参照してほしい。
カメラは不均衡に信号を記録する。特にハイライトのエリアに信号は集中する。
ただし、人間の目はシャドー部とミッドトーンを中心に認識するようになっていて、明るい部分やスーパーホワイトの部分はそこまで認識していない。
この図を見てもお分かりのように、ハイライト部分のデータが圧倒的に多いのにもかかわらず、人間の目はそのほとんどを認識しないため、たくさんのデータが無駄に採取されている事がお分かりいただけるかと思う。
LOG変換によって15ストップのLuma値 (輝度)を12ビットの人間が認識可能な可視領域に絞って再分配しているのである。 この変換は理にかなっているだけでなく、ファイルサイズと色のデータを管理可能なサイズにまとめる事が可能となる。
要約すると、カメラが16ビットの出力をしていても、12ビット出力をしていても、Ninja VやShogunが12ビット記録をしている以上、記録されたProRes RAWのクオリティにほとんど差はないと考えていいだろう。
もし、16ビット記録をProRes RAW以外のフォーマットで録画可能なレコーダーが出現したと仮定しても、現時点ではその色情報を表示できるディスプレイも、カラーグレード可能なソフトウェアも存在しないため、あまり現実的とは言えない。 12ビットLOGはハリウッドでも使われるカメラ等で使用されるほとんどのRAWフォーマットでスタンダード化していることも付け加えて述べておこう。
※REDのREDCODE RAWは16ビット記録になります。
互換性
いくつかのアプリケーションが既にProRes RAWへの対応を謳っている。
ただし、アプリケーションごとに対応の度合いが違うというのが現状である。
Apple公式サイトのProRes RAWに対応した製品のリストは下のリンクからどうぞ
ProRes RAWはAppleの製品であるため、Appleの映像編集ソフトであるFinal Cut Xはこのフォーマットにしっかり対応している。RAWからLOGへのコンバージョンやメタデータのコントロールが可能となっている。ホワイトバランス コントロールやティント、ISO設定、露出設定のオフセットの変更にも対応している。ただし、重要なのはこのRAWパラメータの変更はカメラごとに対応が分かれていて、今現在、完全対応しているのは9つのカメラのみとなっている。α7S IIIはこのリストには入っていない。
Apple 公式サイトでのカメラ別RAWパラメーター対応表は下のリンク
実際にPanasonicのS1Hで撮影した映像とSonyのα7S IIIで撮影した映像をタイムラインに並べてパラメータを細かく比較してみたい。
α7S IIIの映像はRAWからLOGへの変換のパラメータしか変更できない。
※12/10 更新: Ninja Vのアップデートにより「RAWからLOGへの変換」だけでなく、ISOと露出補正のパラメータにも対応 (詳しくはPart 2を参照ください)
※2021年5月24日のファームウェア10.64発表以降、Sonyのα7S IIIからのRAW出力をNinja V経由でProRes RAW記録した場合、ホワイトバランスとISOのパラメーターも記録されるようになりました。
ホワイトバランスのパラメータは表示されるものの、変更は不可能であり、ISOのパラメータに至ってはメタデータの表示すらされない。(更新、詳しくはPart 2で)
※2021年5月24日のファームウェア10.64発表以降、Sonyのα7S IIIからのRAW出力をNinja V経由でProRes RAW記録した場合、ホワイトバランスとISOのパラメーターも記録されるようになりました。
S1Hの映像のパラメータと比較してみると、α7S IIIと同じでRAWからLOGへの変換の項目、に加えホワイトバランスとISOの変更が可能になっている事がわかる。
アプリケーション別で見ても、RAWパラメータ変更がどのレベルまで可能なのかは変わってくる。下の表を参照してほしい。ダビンチ レゾルブは今のところProRes RAWには一切対応していない。
ここで注目するべきはAssimilateのSCRATCHである。このアプリケーションではFinal Cutでは変更不可能だったホワイトバランスとISOの変更が可能となっている。 しかもProRes RAW記録可能なすべてのカメラに対応していると謳っている。
AssimilateはSCRATCHでProRes RAWのデータを取り込み、独自のアルゴリズムでおおよその範囲での色温度変更とISO変更を実現しているらしく、これでは正確な設定変更ができているとは言い難い。もしSCRATCHを使ってProRes RAWのパラメータ変更をするなら、念密にテストを行うことを強く推奨する。
ここで強調したいのはProRes RAWは常に開発が進んでいくフォーマットで近い将来にすべてのパラメータを調整可能になる日もそう遠くないかもしれない。なので、ソフトウェア アップデートには常に注意を払っていきたい。
メタデータ
最後にメタデータの話をしたい。代表的なメタデータの種類としては
がある。RAWで撮影することの利点として、圧縮された撮影ファイルには添付されないこれらのメタデータが豊富に利用できる点である。このメタデータはポストプロダクションであらゆる用途で利用可能である。(VFX作業では必須)
- カメラ (カメラモデル、メーカー、シャッタースピード、フレームレート、ISO、ホワイトバランス等)
- レンズ (レンズモデル、画角、焦点距離、絞り等)
- ビデオ (解像度、コーデック、ファイルサイズ、ビットレート等)
α7S IIIで撮影した場合のメタデータの種類をProRes RAWとXAVCコーデックの両方をFinal Cutに読み込んで比較してみよう。
結論としてはRAWからLOGへの変換、ホワイトバランス、カメラモデルだけが表示され、最も重要だと思われるISOやシャッタースピード、焦点距離などは一切表示されなかった。 MEDIA INFO(サードパーティ製アプリケーションで映像のメタデータを検出する)を使って再度ProRes RAWのファイルを検証してみたところ、絞り値とNinja Vで記録された事が判る。これはSCRATCHを使用しても同じデータが確認できたことから、ProRes RAWに記録されているメタデータはこれですべてだと結論付けても良いかもしれない。 ISO設定の記録は残っていなかった。
正直、この結果に対して残念と言わざる得ない。まずはネイティブアプリであるFinal Cutがすべてのメタデータを表示しない事、そしてISOやレンズ画角の情報が一切見当たらないことの二つに対して失望している。
PanasonicのS1Hと比較をしてみよう。S1Hで撮影したProRes RAWファイルはしっかりとISOデータが記録されていただけでなく、パラメータの変更も容易に可能であった。 Final Cut上では絞り値は見つけられないが、SCRATCHでは表示される。
S1HのProRes RAWファイルからもレンズのモデルや焦点距離の情報は見つける事ができなかった。
最後に、ProRes RAWの絶対的ライバルであるBlackMagic RAWのメタデータと比較してみたい。 AppleとBlackMagicはほぼ同時期に独自のRAWフォーマットを発表したこともあり、比較対象としてはうってつけである。 ProRes RAWをAppleのFinal Cutで、BlackMagic RAWをDavinci Resolveで開いてメタデータの表示項目を比較したところ、BlackMagic RAWではレンズの種類や被写体までの合掌距離などの細かいメタデータが表示されることを確認できた。これはVFXの処理をする場合とても重要な情報である。
α7S IIIのメタデータ記録をまとめると、ProRes RAWではホワイトバランス、絞り値、カメラのモデルが判るという利点はあるが、メタデータの表示がアプリケーションによってばらつきがある事、ISO表示がないこと、レンズのモデルが判明しない事、焦点距離がわからないことなど、まだまだ改善点は多いと言える。
α7S IIIのRAW出力とProRes RAWに関する情報はまだまだカバーしきれないが、少なくとも基本的な部分での理解はしていただけたのではないかと思う。Part 2ではカラーサイエンスとポストプロダクションでの処理についてお話ししたいと思うので、期待していただきたい。