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※2021年5月24日のファームウェア10.64発表以降、Sonyのα7S IIIからのRAW出力をNinja V経由でProRes RAW記録した場合、ホワイトバランスとISOのパラメーターも記録されるようになりました。
The DP JourneyチャンネルのSherif Mokbelさんが前回公開した「α7S III ProRes RAW Part 1」は、α7S IIIのProRes RAW記録に関してとても詳しく説明している動画でしたが、その続編としてPart 2が公開されてますのでご紹介いたします。
※まだ、Part1を読んでいない方は先に読まれてください。
Ninja VのProRes RAW記録対応SSDの確認はこのページから
ちなみに僕が使っていて、ProRes RAW記録対応でほぼ最安値だと思うSSDはSandiskのUltra3Dになります。
今回、SherifさんはProRes RAW / Slog-3で記録をした時に色合いがシフトすることを指摘していて、その色合いを補正するための二つのLUTを無料で公開していますので、興味のある方は(Youtubeページから)上の動画を開いて、説明欄 のリンクをクリックして試されてください。
目次
- ポスト ワークフロー
- RAWからLOGへの変換
- XAVC記録の仕組み
- ProRes RAW記録の仕組み
- ホワイトバランス & ISOコントロール
- 色の正確性について
- ノイズとISO
- レンズ補正
- RAW記録の価値
- 結論
- ProRes RAW記録の長所
- ProRes RAW記録の短所
ポスト ワークフロー
ProRes RAWのネイティブ編集環境はなんといってもFinal Cut上での編集という事になるだろう。 HDRで納品しない場合はライブラリの設定をスタンダードに、そしてプロジェクトの設定もRec709にしておこう。
ProRes RAWの素材を読み込んで気づくのは、クリップの輝度が異常に明るすぎることであろう。 ウェーブフォームモニターを見るとハイライト部は100%を超えて白とびの領域に差し掛かっているに違いない。
白とびの理由はさておいて、まずはFinal Cutが素材を読み込むときに自動で「RAWからLOGへの変換」の項目をS-Log3/S-Gamut3に割り当てている事に注目して欲しい。
素材がSonyのカメラで撮影されたことをメタデータで識別した結果であるが、まずはグレーディングしやすいS-Log3/S-Gamut3 Cineに変更することをお勧めする。また、カメラLUTの項目も同じく自動でS-Log3/S-Gamut3が割り当てられているが、LUTの割り当てはしないことをお勧めする。
上記のように設定を変更をすることで、編集画面上に表示される素材は見慣れたS-Logの色合いになり、この状態をスターティングポイントにすると、グレーディングがしやすいであろう。
より上級者の人は、「RAWからLOGへの変換」の設定も なしにすることでリニアRAWの状態でグレーディングすることをお勧めする。この場合は、ハイライト部が大幅に持ち上がっていることが予想できるが、焦らず、ハイライト部を下げてあげよう。そしてミッドトーンを持ち上げてあげることで、グレーディングの基礎となるスターティングポイントに持って行こう。
ここで誤解をしないよう気を付けたいことがある。ハイライト部を下げることで白飛びして失った情報が復活したように見えるが、そうではない。 Youtubeなどの説明でProRes RAWは白飛びしている部分も回復可能だと誤解を招く情報が出回っているが、間違いである。リニアRAWデータのホワイト値をモニターが表示可能な領域に再設定してあげているだけである。
二番目に紹介したグレーディングの方法は通常のXAVCでのワークフローと全く違ったアプローチになることから、経験豊富な映像制作者やプロのカラリストに限って、このようなリニアRAWのグレーディング手法をお勧めする。この手法はHDRイメージの現像向けと言える。
私も含めた、普通のユーザーは素直に(最初に紹介した)RAWからLOGへの変換のワークフローを活用した方が良いだろう。
RAWからLOGへの変換
「RAWからLOGへの変換」の話をしよう。
まずはRAW映像とXAVCコーデックで記録された映像はどのように違うのか理解する必要がある。 かなりテクニカルな話になるがついてきていただきたい。
XAVC記録の仕組み
XAVC記録時に、センサーはピクセル毎に認識される個別の色情報(RGB)をデジタル信号として記録していく。 センサーに配置されたRGBの配列をベイヤーパターンと呼ぶが、このパターンの詳しい解説は複雑すぎるので割愛する。
プロセッサーは、センサーが受け取ったRGB情報に加工処理を施す。
この時、RGB情報を基に人間の目で識別可能な画像が生成されるが、この処理をディベイヤー処理と呼ぶ。 ディベイヤーの段階ではまだRAWの情報は失われていない。
次に、数々の画像補正処理が行われていく、この工程にはノイズ処理、シャープニング、レンズの歪み補正等が含まれる。
プロセッサーは更にカラープロファイルの情報をRAWデータに適用し、画像の色合いを決定する。ここで紹介する作例は(α7S IIIなので)S-Log 3のカラープロファイルが適用される。 この段階でもまだ画像のRAW情報は失われていない。
プロセッサーは最終処理として、圧縮コーデックの適用を行う。ここで、XAVCコーデックにRAWの情報は圧縮され、解像度もFHDか4Kかという選択がされ、永久に不可逆的な圧縮画像が生成される。
ProRes RAW記録の仕組み
ProRes RAWで記録の場合、XAVC記録に比べると処理工程はシンプルなものとなる。 最初に、RGBのベイヤーパターンを読み取るまでは、全く同じであるが、その情報はNinja Vに直接送信される。
XAVC記録の時はセンサーのRAWデータをプロセッサーが処理(画像の焼き付け)して映像が完成したが、ProRes RAW記録の場合、そのような工程はバイパスされる。 つまり、ディベイヤー処理やイメージの補正、(そして特に強調したい点として)カラープロファイルの適用もされない。
つまり、この段階ではイメージとして成立しない、まさに生のRAW情報のみが存在する事になる。イメージを生成するための素材と撮影時の設定のみが存在する。プロセッサーが施した処理工程はコンピューター上でユーザーがマニュアルで適用することとなる。
コンピューター上でRAWデータを読み込んだ時に最初に行われるのはディベイヤリング処理である。RGBパターンはコンピューターの解釈によってイメージとして表示される。
XAVCでの記録時はカメラのプロセッサーが処理していたカラープロファイルの適用は、(RAWの場合)ユーザーがどのプロファイルを適用するか指定してあげることで成立する。 この工程を「RAWからLOGへの変換」と呼ぶ。
カメラ内でのXAVC記録とRAW記録の大きな違いがここで生じる。XAVC記録では、α7S IIIがSonyのカメラであるためS-Log形式のLOGプロファイルのみ利用可能であったわけだが、RAW記録の場合はユーザーの好きなLOGプロファイルを適用させることが可能である。つまり、PanasonicnのV-Log、CanonのC-Log等のLOGプロファイルで解釈された映像を作り出すことが可能となる。 撮影時にはS-Logでモニタリングしていたとしても、それは撮影時に参照していたLOGプロファイルに過ぎず、焼き付け作業は行われていないのである。
PanasonicのV-Logにカラープロファイルを設定した場合、PanasonicのLogカーブのレスポンスを得る事になる。 これはProRes RAWで記録した時の楽しみの一つと言える。あるいは、先述したように「RAWからLOGへの変換」をなしに設定する事でリニアRAWの素材として扱うことも可能である。
理論的な話ばかりになったが、実際の映像を見ながら見比べてみよう。 Final Cutのタイムラインにα7S IIIで撮影したProRes RAWファイルとPanasonicのS1Hで撮影したProRes RAWファイルを並べて比較しよう。
Sonyの素材に対して「RAWからLOGへの変換」をS-Gammut 3 Cineに設定し、LUT適用をしない。この設定で通常のS-Log3のイメージが画面上に表示される。
この状態で私が作ったクリエイティブLUTを適用(下の写真参照)すると色合いはこのようになる。
自由な発想で、各種Log変換を試してみよう。まずはV-Logに変換してみる。
V-Logに変更した場合、コントラストが弱まり、ミッドトーンでの色彩の移行がよりスムーズになっている。
この結果から、V-Log変換にする事でS1Hと似たような発色になるのではないかと想像された方も多いと思うが、話はそう簡単ではない。 比較してみよう。 α7S IIIの発色は赤 & オレンジ、S1Hはマゼンタの色合いが強めに出ているのがわかる。
この色彩の比較でわかることは、両機種のセンサーが持つ発色の傾向が違いに現れるということであろう。 他のLOG変換も試してみよう。
NikonのN-Logを適用すると、シャドウ部のコントラストが強めに描写され、CanonのC-Logを適用すると少し平凡には見えるが、違った発色になる。 個人的には、このように幾つかのLOG変換を試す事によって、クリエーターとしてのカラーパレットは広がり、同じクリエイティブLUTを使用しながらも異なった表現が可能となることは素晴らしいことだと思う。Sonyのカメラで通常表現不可能だった色彩表現を発見する可能性もある。是非、皆さんもたくさんのバリエーションを試していただきたい。
ホワイトバランス & ISOコントロール
実は、前回のエピソードでお伝えした時にはProRes RAWの短所はISOとホワイトバランス、露出補正の調整ができないことと指摘したのだが、Ninja Vのアップデートにより、ISOの調整と露出補正には対応するようになった。(Final Cutを使用した場合)
※2021年5月24日のファームウェア10.64発表以降、Sonyのα7S IIIからのRAW出力をNinja V経由でProRes RAW記録した場合、ホワイトバランスとISOのパラメーターも記録されるようになりました。
Final Cutを使用した場合はホワイトバランス以外はポストで調整可能となったので、かなり柔軟性が増したと言える。 いずれはホワイトバランスの調整も可能になることを願っている。
残念ながら、Premiere Proでの柔軟性は変わらず、Scratchでの柔軟性も据え置きになっている。前回お伝えしたが、Scratchでのホワイトバランスのコントロールは不正確で結果にばらつきがある。 いずれは全ての編集ソフトで各種パラメータを柔軟にコントロールできるようになって欲しいものである。ProRes RAWはまだまだ発展途中のコーデックであり、その可能性は高いと思う。 カラーグレーディングのソフトウェアとしては最強のDaVinci Resolveは現時点ではProRes RAWには未対応となっており、対応するかどうかも疑問である。なので、ProRes RAWで記録した素材の柔軟性をDaVinci上でも最大限に発揮するためにはProRes 4444にエンコーディングするというオプションを選択せざる得ないだろう。 個人的にはProRes RAWの素材をFinal CutでグレーディングするよりもProRes 4444にエンコードした素材をDaVinci上でグレーディングした方が、より素晴らしい結果が得られると感じている。
色の正確性について
私がカメラ内で記録したXAVCコーデックの画像とProRes RAWで記録した画像を比較した結果、それぞれの発色に違いがあり、そのままではマッチングしないことが明らかになった。 実際の画像で見てみよう。
画像を見てわかると思うが、RAW記録の方がコントラストが強めで色合いがよりシフトしているのが見て取れる。この段階で違いがあるわけなので、全く同じLUTを適用しても、最終イメージに違いは現れることとなる。
現段階では、どちらの色味がより正しいものなのか、その答えを知っているのはSonyだけだと言える。XAVCで撮影した素材とProRes RAWで撮影した素材を同じタイムラインに並べてカラーマッチングをする場合はLuma補正とコントラスト補正が必要になるという結論にたどり着く。
記録フォーマットによる発色の違いを観察していたところ、ある疑問が沸いた。その疑問とは、S-Log3 /S-Gamut3 CineのLOG変換自体が発色の不安定性に一役買っているのでは?ということであった。
よって、S-Log3変換時に発色にズレが生じるのかどうかを検証することにした。
検証方法として、テスト撮影時にカラーチャートをフレームに入れて、その色味がベクタースコープにてどのように表示されるのかをリニアRAWの場合とS-Log3の場合で比較して見た。
(下の写真で)LOG変換を行わないリニアRAWの状態だと、全ての色が正確に配置されていることがわかる。
しかし、「RAWからLOGへの変換」にてS-Log3 / S-Gamut3 Cineを選択すると状況は一変する。いくつかの色彩のベクトルが正確な方向を向かず、ずれてしまっていることがわかる。
この色ズレに関して、「S-Log3の発色の特徴」、と結論付けるには少々ズレ幅が大きすぎる。許容範囲を超えていると言って良い。
更なるテストを、S-Logプロファイルを使用した時の色の再現性という部分に焦点を当てて行なっている。 この色合いのズレを補正するために私は2つの補正用LUTを作ることになった。 (※この動画の説明欄にLUTのダウンロードリンクあり)
一つ目のLUTはHUEの情報だけを補正したもので、各ベクトルが正確な方向を向くようになっている。このLUTを使えば赤、緑、青のベクトルが正しく補正される。サチュレーションとコントラストの補正はあえてしていないので、更にクリエイティブなLUTを載せる場合や色をたくさん弄る人向けのLUTである。
もう一つのLUTは最初のLUTに加え、サチュレーションの度合いも均一にするように調整してある。
イメージを見ても色合いの変化はとても僅かなので分かりづらいかもしれないが、この僅かな違いが見ているものの心理に働きかけると共に、グリーンスクリーンや色補正などでの特定の色を抽出する時に効果を発揮する事になる。
補正用LUTは常にクリエイティブLUTを適用する前に適用する必要がある事を理解していただきたい。 補正用LUTは万能ではないので、最後にファインチューニング(微調整)する必要がある事もお伝えしたい。
また、程度は違うがXAVCで記録した場合もS-Log3 / S-Gamut3 Cineで記録した場合の色のズレには共通性があるため、同じLUTを適用して運用可能である。是非活用して欲しい。
ノイズとISO
ノイズとISOに関してお話ししよう。α7S IIIはローライト(低照度)コンディションでも優秀なカメラと認識されているが、私のテストで新しい発見があったのでお伝えしたい。 前述したと思うが、インカメラで撮影した場合はXAVCコーデックへの圧縮処理の時に各種補正と共にノイズリダクションがかけられる。
XAVCのイメージだけを見てα7S IIIがローライトモンスターだと思っている人たちはRAWで撮影されたイメージを見ることで、その認識を再考させられることだろう。 RAW記録時にはカメラ側でノイズリダクションがかからないため、実際にはどれくらいのノイズが発生しているかが明らかになる。
XAVC / ISO640で記録した場合の画像を見てみよう。一見クリーンなイメージに見えるが、カメラ側でノイズリダクションをかけていても、暗部にノイズが現れているのが見て取れる。
同じ設定で撮影されたProRes RAWのイメージと比較すると、ProRes RAWの方がクロマノイズがたくさん出ている事を確認できる。これはインカメラでのXAVC記録では現れないノイズである。個人的には最先端の裏面照射式センサーがここまでノイズを発生させることに驚いている。
ただし、幸いなことにポスト処理でノイズリダクションを適用すると、インカメラ(XAVC記録)でノイズリダクション処理された映像よりもクリーンなイメージに仕上げることは可能である。
ポスト処理でノイズリダクションをかける場合は、その処理にかかる時間が膨大になる事を覚悟しておこう。ProRes RAWで作品作りをする時はノイズリダクションに費やする時間も予め計算に入れて予定を立てるべきである。
せっかくなので、ISO3200で撮影した場合も比較してみよう。
まとめると、ProRes RAWで撮影した場合はクロマノイズが顕著に現れる。ISOが高いほどその傾向は強まる。 よって、ポスト処理でノイズリダクションをかけることは必須だと考えた方が良い。 ノイズリダクションの処理はCPUに負荷がかかり、時間のかかる作業となる。 個人的には、たとえ時間がかかったとしてもProRes RAWでノイズレベルをコントロールした方がより高画質を得られると感じている。 ISO設定が高い場合は尚更である。
レンズ補正
繰り返えすが、RAWで記録するということはインカメラで通常行われる画像の加工処理は行われない。 当然、ProRes RAWで撮影した場合はレンズ補正処理も行われない。 レンズ補正には「周辺光量補正」、「倍率色収差補正」、「歪曲収差補正」などが含まれる。 これらはインカメラ(XAVC)で撮影した場合はメニューから設定可能な項目でもある。
僅かな違いではあるが、レンズ補正がされていないという事を知ることは重要であり、ポスト工程で補正処理をする必要も場合によっては出てくるという事を心に留めておこう。
RAW記録の価値
ProRes RAW記録を実現するためには最低限必要な機材であるNinja V、記録用SSD(500GB)、HDMIケーブル、モニター用アームなどを揃える必要がある。
合計すると$900(約10万円)くらいの 費用がかかるが、決して高い投資でもないと考える。RAW記録をする時にはHDRモニターが必須であるが、Ninja VがHDRモニターとして機能する事を考慮すると費用対効果は抜群かもしれない。
Ninja Vは5インチ(2.07メガドット)の外付けモニターとして持ち運びにも便利で、カメラ内蔵のLCDディスプレイ(1.44メガドット)と比べると明るく視認性も良いため、昼間の屋外での撮影時に便利である。
それだけではない、このモニターを1つ持っているだけで、市場に出回っている20以上のカメラからのRAW信号を記録できるという利点がある。
また、同じセンサーを搭載したFX6でProRes RAW記録をしようとした場合にはSDI出力経由のため、2倍ほどのお値段で販売されているSHOGUN 7が必要となる事にも言及しておきたい。FX6の兄貴分であるFX9に至ってはProRes RAW記録をするためには40万円ほどの投資(α7S III 1台分の値段)が必要となる事を考えるとα7S IIIで手頃な価格でRAW記録ができることは歓迎されるべきことである。
α7S IIIでProRes RAW記録をする価値がどれくらいあるのか? この質問に私は答えることはできない。でも、あなた自身がこの質問の答えを導き出すための手助けはできると思う。まとめてみよう。
結論
ProRes RAW記録の長所
1) 4.2Kの解像度で記録可能 (XAVC記録と比べ24%アップ)
2) 12ビットのビット深度で記録可能であり、現状ではα7S IIIでの最高画質での記録方式となる
3) 色情報の圧縮がないため、グレーディング耐性がインカメラでの10ビット記録より柔軟でクロマキー撮影等でも、より優れた結果を得られる
4) 編集時に「RAWからLOGへの変換」において、S-Log以外のLOGカーブを選択可能となるため、よりたくさんのグレーディング オプション、カラーパレットを選択可能となる
5) インカメラでのXAVC記録を同時にできるため、高品質のバックアップ & プロキシーファイルを予備として備えることが可能
6) (ライバルと目される BlackMagic RAWを除けば)、RAWファイルとしては比較的軽く編集時のレスポンスも早い
7)(動画撮影時の映像確認用として)外部モニタを最初から導入予定の人たちにとって、Ninja Vを購入すれば、ProRes RAW記録も可能となる。 →比較的少ない投資でRAW記録が可能となり、ハードルも低い
ProRes RAW記録の短所
1) RAW記録時のファイルサイズは大きく、結果的に収録用と編集用&保存用の膨大なディスクスペースが必要となる。
2) 120P記録は不可能である
3) アクティブモードでの手振れ補正が使用不可能であり、(ポスト工程で手振れ補正可能な)ジャイロスコピックデータも記録されない
4) ノイズ量がXAVC記録よりも多く、ポスト処理でのノイズリダクションが必須となる (莫大な時間がかかる)
※ポスト処理でノイズリダクションをかけた場合はXAVCのイメージよりもクリーンにはなる
5) レンズ補正がかからないため、安いレンズを使用する場合は歪みなどに気を使う必要がある
6) 現時点ではポスト処理でホワイトバランスのメタデータを変更不可能となっている
※2021年5月24日のファームウェア10.64発表以降、Sonyのα7S IIIからのRAW出力をNinja V経由でProRes RAW記録した場合、ホワイトバランスとISOのパラメーターも記録されるようになりました。
7) 編集時のソフトウェアの互換性の面で、常にFinal Cutが優先して開発されていくことから選択肢が乏しくDaVinci Resolveで対応する可能性が極めて低い
個人的には、ProRes RAW記録をすることで、より高画質での記録が可能となり、「RAWからLOGへの変換」の選択肢が増えることは素晴らしいことだと思う。RAW記録はクロマキー(グリーンスクリーンなど)の用途で使用した場合、XAVCより断然優れた選択肢ともいえる。 ただし、RAWで記録することは、すぐに編集して完成させなければいけないプロジェクトには不向きであるといえよう。 私なら、ProRes RAW記録をどのような撮影時に取り入れるべきか熟考するだろう。 RAWで記録することで、簡単に魔法のような高画質を手に入れられるというのは幻想でしかない。 現実はその真逆とも言えよう。 RAWで記録した映像はノイズが多く、レンズ補正もされていないのである。RAWで撮影することは、ハイメンテナンスなフォーマットで撮影しているということである。しっかりとしたプランとケアをする準備ができていて、初めてRAWのポテンシャルを引き出し、高画質を得ることに成功する。 しっかりとケアさえできれば、RAW素材を扱うことで、XAVCでの記録よりも遥かに素晴らしい画質を得ることは確かである。 この動画の内容を、あなたがProRes RAW記録をする時の判断材料としてもらえれば、嬉しい限りだ。