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目次
- イントロ
- 簡単なヒストリー
- Introducing RED KOMODO
- スペック紹介(正式発表版は更にパワーアップする予定です)
- スペックだけで見る素晴らしい点
- 周辺機器周りがサードパーディ性や他社性の製品を使用可能になっている
- RFマウント使用、そしてオートフォーカスに対応
- グローバルシャッターを採用
- REDCODE RAWでの録画
- ワイヤレス動画転送用アンテナ内蔵で高速でのミラーリングが可能
- とにかく小さい
- 15ストップのダイナミックレンジ
- 残念な点は?
- スクリーンがボディ上部に固定されている
- 圧縮比率が二種類しかない
- 解像度を変えると、その分クロップして記録される
- 映像出力がSDI端子一つのみになる
- XLR端子がない、NDフィルターが内蔵されていない
- 手ぶれ補正が内蔵されていない
- デュアルカードスロットを搭載していない
- 比較対象のカメラ
イントロ
皆さんはREDカメラと聞いたら何を想像しますか?
映画やコマーシャルを撮影する、あの派手でごっついカメラですよね。
試しにオフィシャルサイトを訪れてカメラの値段を見てみましょう。
ボディだけで(アクセサリーもすごく高いです)250万から500万円くらいしますね。
ホームページにはREDのカメラで撮影されたハリウッド映画のタイトルが誇らしげにたくさん表示されています。
簡単なヒストリー
Red Oneというカメラを作って映像業界に喧嘩を売ってやる
創業者のJim Jannard氏はそう言って自分が所有していたサングラス会社OAKLEYを売り払いカメラの開発に全力投球することを宣言しました。
Jim Jannard氏は2006年にアメリカ、ラスベガスのNAB SHOWで4K映像の撮影可能な(比較的購入しやすい価格帯の)デジタルシネマカメラ RED ONEを発表、予約注文を開始しました。 その時の値段が、$17,500でアクセサリーキット込みで約$20,000でした。
(200万円強でしょうか? 日本に持ってきた場合は250万以上はしたと思います)
比較的安いカメラとは当時どのような文脈で語られていたのでしょうか?
当時、映画撮影用として使われていたSonyのF35(あるいはPanavisionのGENESIS)が$250,000(2500万円くらい)だったことを考えると、RED ONEは1/10以下の値段で同等、あるいは更に上質な(当時はハリウッドでも2K撮影が常識)映像を破格の値段で提供することに成功したカメラと言って良いでしょう。
少なくとも、その後に現れたシネマカメラの値段設定はこのREDの価格に牽制されながら設定されていき、時代の経過とともにシネマカメラ全般の値段を引き下げたという意味では素晴らしい功績を映画制作の現場にもたらしたと言えると思います。
その後、Jim Jannard氏は少し調子に乗ってしまい、3K for 3K($3000で3K映像を!)と謳ってRED Scarletというカメラを更に安い値段で提供すると宣言、それを聞いた庶民(例えば僕)を歓喜で舞い上がらせました。
しかし、最終的な値段は3K($3000)には程遠く、カメラ本体が$10,000に落ち着き、まともに使うためにアクセサリーを揃えると$17,000くらいになってしまい、いわゆる庶民の手の届くカメラではなくなってしまったという経緯があります。
結局その後のREDの路線はミドルレンジのシネマカメラのラインアップを揃えて、ArriのAlexaシリーズよりは安いけど、決して庶民が手を伸ばせるレベルではないカメラを増産してきました。
その結果、ハリウッド映画の撮影にもたまに使われるカメラ、というポジショニングを業界で形成しています。(現在、メインで使われるカメラは圧倒的にArriのAlexaシリーズとなっています)
Introducing RED KOMODO
もはや、庶民が一瞬でも手が届くかも?と夢見ることのできるカメラではなくなったというのが常識となり始めていたのですが、そのRED DEGITAL CINEMAから遂に初めての※プロスーマー向けカメラが登場しました。
※日本でいう、いわゆるハイアマチュアのことを(プロフェッショナルとコンシューマーの間をとって)プロスーマー(Prosumer)と呼んでいます。
REDの歴史上、初めてサードパーティー製のアクセサリーをメインに使用することで本体周りの値段も抑えることに成功したそのカメラはRED KOMODOと呼ばれ、既に予約をしていた熱狂的なRED ユーザーにはベータ版のソフトウェアの入った本体が到着し、レビューがチラホラと登場しましたので、ここで簡単にご紹介していきたいと思います。
スペック紹介(正式発表版は更にパワーアップする予定です)
最終スペックもまだ決定していなく、ソフトウェアもベータバージョンですが、値段だけは決定しています。 $5,995です。 そう、今回REDはScarletで果たせなかった3K for 3KをKOMODOの6K for 6Kで実現しようとしているのです。
(※輸入した場合、RAID JAPANでは¥660,000、国内代理店(例フジヤカメラ)では¥726,000)
※スペックが公式に発表されています。
ちなみにこのカメラの初期の開発目的はNetflixの基準に適合したクラッシュカムを作ろうという発想から始まっています。
今までクラッシュカムといえば簡易なものではGoProシリーズ、そして、少し高級になるとCanonの5Dシリーズ等が使われていましたが、Netflixの撮影カメラの基準が高くなると共に、その基準に適合したクラッシュカムが必要だという発想だったのです。 それが功を奏して無駄な部分を削ぎ落とした高機能カメラを低価格で購入できることになったのです。
- 6K スーパー35センサー 27.03mm X 14.25mm (解像度6144x3240)
- グローバルシャッター
- フルセンサー読み出しで6Kを40fpsまで撮影可能
- 6K ワイド(クロップ)で50fpsまで撮影可能
- 4K撮影を60fpsまで撮影可能
- 2.7Kで120fpsのスローモーション撮影可能
- 12G-SDI出力対応 (2160/60P)
- 16ストップ+のダイナミックレンジ
- R3Dファイル(REDCODE RAW)での録画
- 3.5mm マイク/ヘッドフォン端子
- XLR音声非対応
- CFast Card記録でシングルカードスロット
- ワイヤレス ビデオ モジュール(無線での動画転送に標準対応)
- PDAF(フェーズディテクション オートフォーカス対応)
- タッチスクリーンディスプレイ装備
- キャノン RFマウント
- サイズ 10.16cm x 10.16cm (キューブ形)
- 重量 900g
- バッテリーはキャノンのBPシリーズを使用、デュアルスロット
スペックだけを見て真っ先に残念な点と素晴らしい点、二つの両極端な部分が見えてきますので一緒に考えてみましょう。
スペックだけで見る素晴らしい点
まず、素晴らしい点です。
周辺機器周りがサードパーディ性や他社性の製品を使用可能になっている
参考までに、写真を数枚貼り付けますが、REDの周辺機器の数々とその値段を確と吟味してください。
比べてみましょう。
1) RED KOMODOではバッテリーはキャノンのBP-Aシリーズを使えます。
例えばBP-955は正常価格だと2万円くらいですが、D-Tap付き互換バッテリーは1万円くらいで購入でき、オークションなどでは3千円程度で販売されています。
2)RED KOMODOではSmallHDのモニターを使ってタッチスクリーンでのタッチフォーカス可能です。
3) RED KOMODOでは普通にCFast 2.0カードでの記録が可能です。
RFマウント使用、そしてオートフォーカスに対応
今回、RED KOMODOではPLマウントではなく、キャノンのRFマウントを搭載してきました。
もちろん、PLマウントレンズよりもRFマウントレンズは値段的にもお手頃になるのでしょうが、それよりも何よりも、このマウントを採用することで、REDカメラで初のタッチ式、そしてコンティニュアス オートフォーカス機能を採用したことが大きいでしょう。 (下のBrandon Washingtonさんの動画を再生したらオートフォーカスのサンプルから再生します)
また、EFマウント用のドロップインフィルターアダプターを使用することで可変式NDを利用することも可能となりました。
ここで、余談になりますが、今回、KOMODOにおいてRFマウントとBPバッテリーの使用をREDに許可した(技術提携した?)見返りとしてCanonのシネマラインカメラがボディ内でのRAW記録をすることをREDは黙認したという説がありますが、おそらく本当でしょう。この件に関してREDはAppleと争ったこともあるくらいですからかなり大きな提携だと言えます。
RFマウントでのオートフォーカス制御の技術提携がRED KOMODOを産み出し、REDが内部RAW記録を黙認したためにC500 MKII、C300 MKIIIや1DX MKIIIがRAW記録可能になったということでしょう。
グローバルシャッターを採用
シネマカメラの今後の傾向として、価格的にローエンドのシネマカメラも今後はグローバルシャッターを搭載してくることと思われますが、(BlackMagic URSA等は既に実装)この価格帯のシネマカメラ、例えばCanon C200、Panasonic EVA1はもちろんのこと、Sonyのハイエンドシネマカメラ F65やCanonのC500MK2、Panasonic Varicam LTに至るまで、ローリングシャッターを使用している機種が大多数なことを考えれば 、この価格帯でグローバルシャッターを搭載してくるのは素晴らしいことだと思います。
REDCODE RAWでの録画
REDCODE RAWは数あるRAWコーデックの中でも、ほぼ全てのNLE(ノンリニアエディティング)プラットフォームにサポートされていて、柔軟性も高いです。
- ProRes RAWと比較して、フルレンジのホワイトバランスをサポートしています。
- BlackMagic RAWと比較して、フルレンジのISO設定をサポートしています。
- カラープロファイルの変更も自由自在にできます。
ワイヤレス動画転送用アンテナ内蔵で高速でのミラーリングが可能
昨今はワイヤレスビデオ転送が広く使われるようになりました。 ほとんどのミラーレスカメラではApp経由で録画画面のミラーリングができますが、電波が弱いとレイテンシーが生じ、モニタリング側での遅延が起こりやすいです。
HollylandのMars 300など、HDMI経由で高速転送できる機械もありますが、KOMODOに内蔵された動画転送システムはかなり優秀で、レイテンシーをほとんど感じません。(下のDeffinitely Mattさんの動画を再生すれば、レイテンシーテストの様子が見れます)
とにかく小さい
サイズはスペックにも書いてますが、本当に小さく、Ronin-SやZhiyunのジンバルに簡単に載せられます。(下の動画ではZhiyun Crane 3Sに載せている様子が見れます)
15ストップのダイナミックレンジ
RED カメラシリーズの特徴として、幅広いダイナミックレンジのセンサーを搭載するという点がありますが、KOMODOも、この価格帯の他社のシネマカメラと比較した場合、15ストップのダイナミックレンジはかなり広い方だと言えます。
ダイナミックレンジの点ではCanon R5やSony α7SIIIのようなミラーレスカメラに比べると断然優位性があると言えます。(下の動画はKOMODOのレビューですが、全編KOMODOで撮影されています)
残念な点は?
多くのレビューアーが語っていることで共通して残念だと言っていることを羅列してみたいと思います。
スクリーンがボディ上部に固定されている
明るい日中にはほとんどスクリーンが見えなくなるらしく、スクリーンがトップの位置にあるため、サンシェードは使えないのはとても痛いとのことです。
また、ジンバル撮影の時はいうまでもなく、全く機能しないとのこと。必ず、別途のスクリーンが必要となります。
先述のDeffinitely Mattさんによるとタッチコントロールが若干未熟で、2000年代のAndroid端末を使っているようだとのことです。但し、これはベータ版なので商品が完成した暁にはもっとレスポンシブなタッチコントロールになることを期待するとのことです。
圧縮比率が二種類しかない
現在、ベータバージョンではRAWの圧縮比率が二種類しか選べないとのことです。圧縮比率の低い方で録画した場合、256GBのカードに15分しか記録できないそうです。
外部SSDに記録できるBlackMagicやZcam、Sigma fpと比べると物足りない部分になってしまいます。
解像度を変えると、その分クロップして記録される
下の写真は先述のBrandon Washingtonさんの動画から切り取ってます。
その原寸大の写真をみて貰えばわかりやすいかと思いますが、6Kから5K、そして4K、2.7Kと解像度を落とすたびに画面がクロップされていきます。これはKOMODOに限ったことではなく、全てのRED CAMERAに共通する特徴です。 つまり、120fpsのスローモーションを撮影する時にはかなりクロップされた映像になることを覚悟しなければいけません。
映像出力がSDI端子一つのみになる
HDMI出力対応のモニターが格安で売っている昨今、HDMI端子があってもよかったのではないでしょうか? また、外部出力端子は一個だけなので、たくさんのモニターで確認したい時に取り回しが面倒になるかもしれません。(その分、ワイヤレスで画像転送できるのは武器ではありますが)
XLR端子がない、NDフィルターが内蔵されていない
これは通常のプロフェッショナルシネマカメラには必須の機能だけに、この辺がないというのは、やはりクラッシュカムを最初に想定して作り始めたからなのかも知りませんが、物足りないと言えるでしょう。
手ぶれ補正が内蔵されていない
このクラスのカメラに手振れ補正を求めるのは酷かもしれませんが、KOMODOはCanon EOS R5やPanasonic S1Hなどのカメラを買う人が背伸びすれば変えるレベルの金額設定、ボディのサイズだけに、手振れ補正の有無という点だけを見れば、ないのは弱点と言えるかもしれません。
デュアルカードスロットを搭載していない
これもクラッシュカムの設計からなのでしょうか?
いや、むしろクラッシュカムだからこそ、デュアルカードスロットは搭載するべきではなかったのでしょうか? 危険で過酷な状況で使われる可能性の高いクラッシュカムでこそ、2枚のカードに同時記録しておくことは安心につながるのかと思うのですが、ないものはしょうがないですよね。
比較対象のカメラ
まず、シネマカメラとして比較するならばBlackMagic Pocket CInema 6KとZcam E2が挙げられます。
特にZcam E2シリーズはカメラは似たような形状をしていますが、圧倒的に価格帯では安く抑えられています。 オートフォーカスはありませんが、Z-Rawは13〜15ストップのダイナミックレンジを持ち、E2-M4は4Kで160fpsが可能となっています。 また、Zcamシリーズは僕も実際に手に取ってみたことがあるのですが、KOMODOよりひと回り小さくSSDへの外部記録も可能となっているといった利点もあります。 また、HDMI経由での外部ディスプレイを使った画面操作のメニューやタッチ操作の便利度などは定評があるため、簡単にどちらが機能的に上位かと言う判断はできず、難しいところです。 確実に言えるのは、KOMODOはE2の2倍から3倍の値段だと言うことでしょう。
小型シネマカメラの比較対象としては、同じ価格帯(現行販売価格)として、PanasonicのEVA1やCanonのC200、SonyのFS7 MK2等がありますが、全てXLR入力とNDフィルター内蔵となってます。(RAW記録は外部対応の機種あり)
※新しくCanonからC70、SonyからFX6が同価格帯で発売されました。
ミラーレスカメラに目を移すと価格はかなり下がりますが、強力な手振れ補正を持ったPanasonicのS1H、外部記録可能でProRes RAWとBlackMagic RAWの両方に対応したSigmaのfp、一応、8K RAWが撮れるCanonのR5と超高感度特性を持つSonyのα7SIIIといった機種が比較対象となってくるでしょう。(以上、全てフルフレーム機)
正直、価格帯では厳しいのですが、近日、制作完了、上映されるMatrix 4の撮影はRED KOMODOで行われていますし、シネマカメラとしての全体的な経験値(コーデックやメニュー、アクセサリー、取り回しの良さ等)ではやはりRED KOMODOが半歩先に出ているのかもしれません。
皆さんはここまで読まれてどう感じられましたか? この価格帯のシネマカメラとしてはありえない機能(オートフォーカス、ワイヤレス画像転送など)を詰め込んだ割にはシネマカメラとして重要なNDフィルターやバランス音声入力が装備されてない点など、ミラーレスカメラ側に寄せ過ぎた感がありますが、この価格帯でREDの素晴らしいコーデックやカラーサイエンス、ダイナミックレンジ、グローバルシャッター搭載ということを考えると確実に魅力的なカメラだと言えないでしょうか?
CanonはEOS R5のオーバーヒート炎上の後、RFマウントのシネマカメラの発表で巻き返し(?)を図っていると言われています。もちろん、そのカメラはまだ発表されていません。
今のところわかっているのは型番のみ(噂)です。 でも、確実にEOS R5よりは高額になるでしょうし、C200より高額になる可能性だってあります。(もちろん、その分、オーバーヒートもしないでしょうし、IBISも搭載してくるのでしょうけれども)そう考えると、同じRFマウントを装備したRED KOMODOと言う選択肢が出現し、その素晴らしい性能が表に出れば出るほど、購入するユーザーサイドを迷わせる、そんな状況になりそうです。
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